最後にお母さんに髪を結ってもらったのはいつだろう。髪を結いながら、私の話を「うんうん」と聞いてくれたお母さん。いつでも自分の存在をまるごと肯定してくれた存在、お母さん。

だけど当時は、自分を思いやるお母さんの言動を理解できなかったり、疎ましく思ったり、ときには反発してみたりもしました。
そんな「あのときはごめんね」を、大人になった今、もう一度お母さんに髪を結ってもらいながら伝えます。

「おかあさん、あのね」

「なんとかなる、なんとかしちゃえ」がお母さんの口癖

今回お母さんに「ごめんね」を告げるのは、穏やかな笑顔が印象的なミホコさん。現在は都内で会社員として働く一方、地方の観光・宿泊施設、飲食店のPR活動を行っているんだとか。

まずはミホコさんに、お母さんの人柄やお母さんとの思い出、謝りたいと思っていることなどを伺ってみました。

画像1: 「なんとかなる、なんとかしちゃえ」がお母さんの口癖

ミホコさんから見たお母さんって、どんな人ですか

ミホコさん「すごく前向きです。ピンチが起きても『なんとかなる、なんとかしちゃえ』って口癖のように良く言っていますね」

それは心強いお母さんですね。そんなお母さんに助けられたことも?

ミホコさん「ありますね。前職が激務で、過労やストレスからいろいろな病気を発症してしまったんです。喘息や腰痛、坐骨神経痛、ヘルニア。一度は寝たきりの生活にもなってしまって……その時期母は、実家の群馬から頻繁に東京へ来て、献身的に励ましてくれたんです」

画像2: 「なんとかなる、なんとかしちゃえ」がお母さんの口癖

ミホコさん「それに2年半付き合ってから同棲した彼氏と別れたときも、積極的に外に連れ出してくれました。悲しいことを忘れられる時間をたくさん作ってくれたんです。母の支えがあったから、自暴自棄にならずに済んだんだと思います」

そんな大変な時期も、そばで支えてくださったんですね。そんなお母さんに謝りたいことは?

ミホコさん「ときどき、私が母の人生を犠牲にさせてしまってるんじゃないかって不安になるんです。もっと母にも贅沢をしてもらいたい。でも、それができないのは私がずっと心配をかけ続けていたせいでもあるんです。だから今回はそのことを改めてちゃんと謝りたいなって」

「お母さんの人生を邪魔してしまったことを謝りたい」と、自分を責めるミホコさん。果たしてお母さんはミホコさんの告白にどんな反応をされるのでしょうか。ここからは、親子2人きりで語り合っていただきます。

髪を結いながら思い出す、思春期の娘へ毎日贈った母からの手紙

画像1: 髪を結いながら思い出す、思春期の娘へ毎日贈った母からの手紙

お母さん「懐かしいなあ。小学生の頃は毎日こうやって髪の毛を結ってたよね」
ミホコさん「私、ずっと髪の毛長かったもんね。小さい頃は自分で切っちゃってたけど」
お母さん「スカートを履いてるのに男の子に間違われるくらいだったもんね(笑)いつからだろうねえ、こう、しおらしくなったのは」

庭の見える縁側で、ミホコさんの髪をクシでとかすお母さん。すると、いつの間にか二人が過去に交わしていた、とある「手紙」の話題になりました。

画像2: 髪を結いながら思い出す、思春期の娘へ毎日贈った母からの手紙

ミホコさん「思春期の頃かな? 思春期って言えば、お母さん中学生の頃毎日お弁当に手紙を入れてくれてたよね」
お母さん「あ、そうだった! 思春期にもなるとどうしても会話が少なくなるじゃない?だからお弁当に手紙を入れたの」
ミホコさん「そうだったんだ」

画像3: 髪を結いながら思い出す、思春期の娘へ毎日贈った母からの手紙

お母さん「手紙を入れた1日目のこと覚えてる? 『なんでこんなの入れたの? 友達に見られて恥ずかしかった!』って怒られたの。だから手紙入れるのをやめたら今度は『手紙入ってなかったんだけど!』って(笑)」
ミホコさん「そうだっけ(笑)?」
お母さん「それからは3年生まで毎日手紙を入れたんだよね」

画像4: 髪を結いながら思い出す、思春期の娘へ毎日贈った母からの手紙

ミホコさん「そうそう。毎日私が好きなキャラクターの絵を書いてくれて……お母さん、だんだん絵がうまくなっていっていたよね」
お母さん「その手紙を全部とっておいてくれているのが嬉しかったな。部屋で『あれ?これなんだろう?』ってお菓子の缶を開けたら、お母さんが書いた手紙が全部入ってたのよね」
ミホコさん「あれは捨てられないよ」

画像5: 髪を結いながら思い出す、思春期の娘へ毎日贈った母からの手紙

お母さん「面白いもので、口で言えないことも文には書けるんだよね。気持ちが伝えられる。3年生って進路のこともあるし、あまりお母さんが言ってもうるさいと思われるでしょ?」
ミホコさん「その頃の私だったら確かにそう思ってたかも」
お母さん「それにミホコは兄弟の中で1番反抗期が強かったから(笑)自分の主張をきちんと言える子だったわよね」
ミホコさん「それは家族皆が私に甘かったし、のびのびやらせてくれてたからだよ」

思い出の手紙にも、お母さんなりの気遣いと愛情が詰まっていたことを再認識したミホコさん。さて、いよいよお母さんに謝りたかったことを告白します。

母に心配をかけさせた、娘からの「おかあさん、あのね」

画像1: 母に心配をかけさせた、娘からの「おかあさん、あのね」

ミホコさん「おかあさん、あのね、今日は謝りたいことがあるの」
お母さん「謝りたいこと? なんだろう」
ミホコさん「私は兄弟の中で一番心配させたと思うのね。だから、ありがとうと同じくらい、お母さんにはごめんなさいという気持ちもあって……。安定していた仕事も勝手にやめちゃうし、同棲していた彼氏ともあっさり婚約も解消しちゃうしさ」
お母さん「それはお母さん、どちらも賛成だったよ」

画像2: 母に心配をかけさせた、娘からの「おかあさん、あのね」

ミホコさん「仕事を辞めたときなんかさ、身体も心もボロボロになって夜中に電話して呼び出しちゃったよね。迷惑かけちゃったなって思ってる」
お母さん「お母さんは全然迷惑だなんて思ってない。職場のことも結婚のことも、絶対無駄なことじゃなかったんだよ。すべてミホコを成長させてくれたと思ってる」

無意識のうちに渡していた「親孝行」

画像1: 無意識のうちに渡していた「親孝行」

ミホコさん「でも……お母さんは30年間、気が気じゃないじゃなかったんじゃない?」
お母さん「それは寝られないほど心配したよ。言わなかったけどね。朝4時ごろ目が覚めて『ミホコは大丈夫だろうか?』って。でも信じてたよ、絶対あの子は大丈夫だって」

画像2: 無意識のうちに渡していた「親孝行」

お母さん「その証拠にミホコ、今が1番生き生きしてるじゃない。前に言ってくれたよね『産んでくれてありがとう』って。あれは本当に嬉しかった。だって今が幸せじゃなきゃそんなこと言えないよ?」
ミホコさん「うん、そうかもしれないね。でもさ、私親孝行らしい親孝行、今まで全然できてない……」

画像3: 無意識のうちに渡していた「親孝行」

お母さん「何言ってるの、ちゃんと親孝行してるじゃない。兄弟の中でミホコが一番遊んでくれるでしょう。お母さんが東京に出てきたとき色々企画してくれて、しおりができるくらい(笑)だから、ちゃんとしてもらってるよ? 親孝行。ちゃんともらってる」
ミホコさん「本当に?」
お母さん「うん。お母さんね、今が一番幸せだよ」

娘が意外なことで悩んでいたことを知ったお母さん。そして、自分が無意識のうちにちゃんと親孝行をしていたことを知ったミホコさん。髪が結い終わったあとの二人の表情は、穏やかな安堵の顔をしていました。

画像4: 無意識のうちに渡していた「親孝行」

十数年ぶりに「昔と比べて今は下手になっちゃってるかも」と言いながらも、嬉しそうにミホコさんの髪をきれいに結ってくれたお母さん。そのかけがえのない時間は2人の関係をより確かなものへと結び直してくれたようでした。

大人になった今だからこそ、お母さんに「久しぶりに髪の毛結んでくれない?」と甘えてみてはいかが? 背中越しなら、子どものような素直な気持ちで「おかあさん、あのね」と話し出せるかもしれませんよ。

ライター/いちじく舞
写真/高山諒(ヒャクマンボルト)
編集/サカイエヒタ(ヒャクマンボルト)

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