父と娘・二人での親子飲みにお邪魔する当連載・第5弾は、フリーライターとして働く娘・しのさんと、父・賢樹(まさき)さんのお二人。

しのさんによると、お父さんは仕事が忙しく、幼い頃にはほとんど家におらず、中学校〜大学3年生までの約9年間は単身赴任で月に一度しか帰ってこられなかったのだそう。

「仲良しではあったけど、長い期間単身赴任でいなかったから、思い出もないんですよね」と語るしのさん。

ちなみに、なんと二人でお酒を飲むのは今回が初めてだそう。聞きたいことも話したいこともたくさんあるというしのさんは、ちょっとした“サプライズ”も用意してきたそうですよ。記念すべき初の親子飲みの模様を覗いてみましょう。

画像1: #親子飲みやってみた! 第5回@北千住

娘・しのさん
都内を中心に活動するフリーランスのライター。北千住を選んだのは、たまに通勤・通学の時間が重なったときに、二人で電車に乗っていた思い出があり、いつもお父さんの乗り換えで別れる駅が「北千住」だったのだそう。いまでも「次は北千住」というアナウンスでお父さんのことを思い出すのだとか。

画像2: #親子飲みやってみた! 第5回@北千住

父・賢樹さん
都内の企業で、マーケティングに関わる仕事をしているお父さん。女性の多い職場にお勤めということが関係しているのか、柔らかく優しげな雰囲気が漂います。9年の単身赴任を経て、東京へ戻ってきました。

今日、たまたま仕事が全部片付いたんだよ

画像1: 今日、たまたま仕事が全部片付いたんだよ

しのさんの「では、とりあえず……」の声に、お父さんが調子を合わせて

「乾杯!」の声で、親子飲みがスタートしました。

画像2: 今日、たまたま仕事が全部片付いたんだよ

まず話し始めたのはお父さん。なんだか嬉しそうな笑顔ですが……?

お父さん「いやあ、今日、思ってたよりも仕事が早く終わってさ」

しのさん「確かに、いつもに比べたら早いよね」

お父さん「それがさ、なぜかここ数ヶ月ずっと続いていた仕事が、今日になって全部きれいに片付いちゃったんだよね。不思議なことに。こんなに気楽にお酒が飲めるの、いつぶりかな……」

しのさん「それがたまたま今日だったんだ。もってるね(笑)。確かに、お母さんから『最近お父さん仕事大変らしいよ』って聞いてたから、大変そうだなあとは思ってた。でもお父さんって、そういうの家であんまり出さないよね。仕事が終わらなくてイライラしたり、不安になってるような様子とか、見たことないかも」

お父さん「うん、そもそもイライラしたり不安になったりしない。だって、いつかは終わるし」

しのさん「我が父ながら、能天気すぎる……(笑)」

大事な決断も、いつも事後報告だよね

画像1: 大事な決断も、いつも事後報告だよね

しのさん「親子でお酒を飲むって初めてじゃん。今日私から誘われたとき、どう思った?」

お父さん「うーん、ちょっと不安になった。なんか頼みごととか下心があるんじゃないかって……」

画像2: 大事な決断も、いつも事後報告だよね
画像3: 大事な決断も、いつも事後報告だよね

しのさん「(笑)」

お父さん「だから、親子飲みの企画なんだよ、って聞いて逆に安心したかな」

しのさん「今回お父さんを誘ったのはね、最近私が一人暮らしを始めて、二人で話す機会がより少なくなっちゃったな、と思ってたから。私が一人暮らしを始めるって言ったときも止められたりはしなかったけど、素直な気持ちはどうだったんだろうって、ちょっと気になってた」

お父さん「うーん、しのはいつも事後報告だもんね。大学を辞めたのも突然だったし、専門学校を辞めてフリーライターになるって聞いたときも「専門は卒業した方がいいよ」って言ったけど、そのときにはもう辞めてたし」

しのさん「迷ってる時間もったいないなって思っちゃうんだよね。」

お父さん「学校を辞めてフリーになるって言われたときはさすがに驚いて、「22歳の娘が仕事をもらえる環境ってどういうこと?」って聞いたよね。」

しのさん「そうそう。今も心配だと思ってる?」

お父さん「最初はずいぶん急だなあとは思ってたけど、最近は時代の変化も感じているし、それで生活がしていけるならいいかなとは思っているよ。むしろ、不安定なフリーランスという働き方を選択しているって勇気があるなあ、って感じるようになったかな。まあ、しのは昔からいつも急なんだよね。高校受験のときも、中学3年の10月に突然『志望校変える!』って言いだして」

しのさん「たまたまテレビでやってたドキュメンタリー番組に出てた吹奏楽部に影響を受けて、私もこの高校に行きたい! ってなったんだよね」

画像4: 大事な決断も、いつも事後報告だよね

お父さん「正直、しのは中学の成績がよかったから、もっと他にいいところに行けるのにな、とは思ってたよ。でも学校の先生にも反対されなかったし、しのがやりたいと思った吹奏楽を一生懸命やろうとしていて、それはそれでいいのかなって思ったかな」

しのさん「そうだったんだ」

お父さん「今回の一人暮らしもさ、いきなりではあったけど予兆はあったよね」

しのさん「え?」

お父さん「引越し決める少し前に、しょっちゅう『お父さん、転勤決まった?』って聞くようになってたでしょ。僕が転勤して、しのまで一人暮らししちゃうとお母さんが一人になっちゃうから、それを気にしてたんだよね」

しのさん「そうだったんだよ。え、意外! お父さんって、私たちのことをよく見てるんだね」

しのが好きな食べ物は「お肉」だよ、絶対

画像1: しのが好きな食べ物は「お肉」だよ、絶対

お酒も進み、親子の会話が盛り上がる中、ここで編集部が事前に用意しておいた「でれぽか指令カード」が登場。封筒にランダムで入った質問やキーワードに沿って話をしてもらいます。今回はどんな指令が飛び出すのでしょうか?


Q1. お互いの好物、知っていますか?

画像2: しのが好きな食べ物は「お肉」だよ、絶対

お父さんしのさん「好物……」

しのさん「これ、難しいかも。だってお父さんなんでも食べるもん(笑)」

画像3: しのが好きな食べ物は「お肉」だよ、絶対

お父さん「僕、これわかるよ。しのが好きなのはね、『お肉』」

画像: しのさんの表情が固まる……。

しのさんの表情が固まる……。

しのさん「え、ありえないんだけど! 全然違う」

お父さん「違くないよ。お肉」

しのさん「なんでそんなに強気なの?(笑)」

お父さん「だって、しのは僕が家に帰ってきたときは、決まっていつも、焼肉とかステーキに行こうって言うでしょ。昔からずっとそうだし」

しのさん「うーん、それはご褒美的なやつだから、好物とはちがう気がするんだけどな。お母さんと二人だとなかなか行く機会がないから、お父さんが帰ってくるときに誘うだけでさ。私が好きなのは『トマト』だよ。高校のときに三食トマトの生活を三ヶ月続けたら全身真っ黄色になって、皮膚科の先生からドクターストップがかかった話しなかったっけ?」

お父さん「ああ、それは聞いたことあるかも。でも、しのは『お肉』だよ」

画像4: しのが好きな食べ物は「お肉」だよ、絶対

しのさん「うん……じゃあもうそれでいいや(笑)。お父さんは、しいて言うならチョコレートかなぁ。冷蔵庫にチョコパイとか入れてるもんね」

お父さん「確かにそうだね。言われてみたら、甘い物は好きかも」

しのさん「女性の多い職場だったから、毎年バレンタインデーとかチョコレート30個くらい持って帰ってきてたよね。お返しを忘れないようにExcelで表にまとめたりして……(笑)」

お父さん「懐かしいな、今はもうそんなことしないようになってきたけどね。そういえば、しのからも手作りのトリュフとかケーキとかもらってたね」

小さいころの思い出とか、ないんだよね

画像1: 小さいころの思い出とか、ないんだよね

Q2. 小さいころの思い出

しのさん「うーん……私、ないんだよね」

お父さん「え、そうなの?」

しのさん「お父さんと一緒の思い出ってことでしょ? そもそもずっと家にいなかったから……。かろうじて思い出せるのは、小学生の頃かな。毎日深夜の1時とか2時にお父さんが帰ってきて、お母さんはとっくに寝ちゃってて……。ドアにチェーンがかかってて、何度もチャイムを鳴らすから私がドアを開けたんだ。それで『おかえり』って言って、私はもう一度ベッドに戻る……みたいな」

お父さん「ああ、あったね」

しのさん「だからどこかに旅行に行ったとか、一緒にこんな話したとか、そういう思い出が全然ないんだよね」

お父さん「そっか。子どもはそういうものなのかもね。お父さんはいっぱいあるよ。まずは、家族で一緒に行ったホテルで、偶然花火があがって三人で見た思い出」

画像2: 小さいころの思い出とか、ないんだよね

しのさん「ああ、言われてみたら、あったかも!」

お父さん「ある日しのがね、スーパーとかに置いてあるホテルの割引券を持ってきて『ここに行きたい!』って。その頃は僕も仕事が忙しくて一緒の時間が作れてなかったし、年に一度は家族でどこかに行こうって決めててね。それで、『せっかくしのが行きたいって言うもんだから』って、家族で泊まりに行ったんだよ。そしたら、ちょうどその日は花火大会があったのかな。しのとお母さんが二人で、僕が一人で、それぞれ隣り合った外風呂に入りながら、打ち上げ花火を見たんだよ」

しのさん「そうだったんだ」

お父さん「あと、母の日のプレゼントは絶対一緒に買いに行ってたよね」

しのさん「それは覚えてる。お父さんがタバコ買うのについていくって嘘ついて、タバコ屋とは反対の花屋に行って……」

お父さん「あの時はしのが『どうしてもお母さんにカーネーションを買ってあげたい』って言ったんだよ。でもお金が足りなくてどうしよう、って。だから僕が『内緒だよ』って言って半分出してあげた」

しのさん「よく覚えてるなあ……!」

お父さん「子どもはどんどん成長していくけど、親はずっと大人のままだからね。覚えてるもんなんだよ。しのは忘れてても、素朴な思い出はいっぱいあるよ」

父の日のプレゼントはこれにしようって決めてた

時間が過ぎ、親子飲みもそろそろ終盤にさしかかった頃、お父さんはお手洗いに。

その隙に しのさんが、今日の親子飲みに向けて とある「準備」をしてきたことを取材班に教えてくれました。

ほどなくお父さんが戻ってきて、今日の感想を語り合います。


しのさん「お父さんとこうやって二人で話す機会って初めてだったから、すごく嬉しかった。子どもの頃は気づかなかったけど、自分が社会人として仕事を始めてから、お父さんは人生の大変なことを全部経験してきた人なんだって気づいて。素直に尊敬するようになったし、相談したときに一番的確な答えをくれる存在になったんだよね」


お父さん「最近は相談してくることも増えたよね」

しのさん「うん。それでね、そういった日頃の感謝も込めまして……。今日は父の日のプレゼントを用意してきました」

画像1: 父の日のプレゼントはこれにしようって決めてた

お父さん「え、本当?」

しのさん「男の人へのプレゼントって、難しいんだよね。お財布、名刺入れ、ジッポ、手袋……このあたりをあげたらもうネタが尽きちゃう。でも、今回はちょうどお父さんにぴったりなものを見つけて、『これだ!』って思ったんだ。というわけで……どうぞ!」

画像2: 父の日のプレゼントはこれにしようって決めてた
画像3: 父の日のプレゼントはこれにしようって決めてた

お父さん「嬉しいなあ、ありがとう……。へえ、キーホルダーに靴べらがついてる!」

しのさん「これはもうお父さんにぴったりだな、って思って。ていうか、お父さんって私があげたプレゼントとかって使ってくれてるの?」

お父さん「もちろんだよ。いま使ってるペンケースだって、昔しのに『もう使わないから』ってお下がりでもらったものだし(笑)。小さい頃にくれた肩たたき券とか、まだ持ってるよ」

しのさん「え、捨ててないの?」

お父さん「捨てられないよ。特に小さい頃に作ったものって、いまとはまた違ってお金がない中で頑張って工夫してくれたものでしょ。嬉しいし、いまでも大切だよ」

しのさん「へえ、そういうものなんだね。やっぱり話してみないとわからないことって多いなあ。本当に今日ふたりで飲めてよかった。楽しかったし、お父さんにとっては家族の思い出がたくさんあるって知れたし。好きな食べ物の話なんかも普段しないしね(笑)」

お父さん「トマトでしょ? 覚えたよ(笑)」

画像4: 父の日のプレゼントはこれにしようって決めてた


親子飲みが始まる前は、「お父さんとの思い出、あんまりないんですよね」と話していたしのさん。でも、実はお父さんの記憶の中には、素朴ながらも、かけがえのない思い出がたくさんありました。お父さんの話を聞いてるうちに、しのさんも「ああ、それ覚えてる!」と思い出す瞬間も。


お店を出てからも「ねえ、お母さんからLINEがきて、迎えにきてくれるって」というしのさんの言葉に「お母さんは本当に寂しがりやだな」なんて言いながらも、ちょっと嬉しそうなお父さん。

いままで会えない時間が長かったからこそ、お互いを大事にしようという気持ちが自然と芽生えたのかもしれない、優しい雰囲気がそっくりな親子でした。

これからももっと、素敵な思い出を増やしていってくださいね。

画像5: 父の日のプレゼントはこれにしようって決めてた

取材・編集/園田菜々+プレスラボ
写真/飯本貴子

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