幼い頃、一緒に様々な体験をしながら、一つずつ学んでいく娘の成長を、ずっとそばで見守ってくれたお母さん。娘が大人になった今。今度は、大人同士で一緒に学びあえる機会を作ってみませんか?同じ体験を共有しながら、同じ刺激と感動を得られる、そんな母娘の学び旅に出かけます。
「ものづくり」をテーマに、遠足を企画!
第1回目に登場してくれるのは、神戸で「Cafe Otogi」を経営している絵里佳さん。お母さんとは、週1回は二人で食事に出かけ、海外旅行にも3ヶ月に1回ペースで出かけるそう。
絵里佳さん「ママの方が行動的なので、言い出しっぺは、いつもママ。私がママを連れて行ってあげるのは初めてかもしれません」
大学生の頃から神戸で一人暮らしをしている絵里佳さん。お母さんとの待ち合わせは、2015年にオープンさせた自身のお店「Cafe Otogi」で。
「親友のように仲がいい」と言う二人ですが、確かに母娘というより、友達同士のような雰囲気です。
「Cafe Otogi」は、店名の通り、おとぎ話の世界に迷いこんだような雰囲気やメニューが楽しめるコンセプトカフェ。お母さんとロンドン旅行に行った際、訪れたレストランの「まるで森の中にいるよう」な壁紙やインテリアにひと目惚れ。「私もこんなお店をやりたい!」と一念発起し、アンティーク家具や照明選び、絵里佳さんが作るメニューの試食まで、お母さんも協力して、イメージ通りのお店をオープンさせました。
お母さん「私が手伝ったのは最初だけで。今は絵里佳が一人でアルバイトさんも雇って切り盛りしているよね」
「Cafe Otogi」が軌道に乗ったことで、同じ目的を持って、協力しあうことが少なくなったという二人。今回の母娘学び旅では、そんな二人が一緒に体験するシーンがたくさん!旅のしおりで、絵里佳さんがその工程を披露します。
ファッションセンスや味覚のセンスが似ているという二人。今回訪れるのは、アパレルブランド「tamaki niime」の工房とカフェ。そして、コーヒーショップ「はまもとコーヒー」の2件。どちらも、絵里佳さんが好きな「ものづくり」にこだわるスポットです。
お母さん「絵里佳は、小さい時から料理やものを作るのが好きな子で。でも私はてんでダメ(笑)。でもファッションやコーヒーは大好きなので、すごく興味があります」
絵里佳さん「今はお店が順調なので、新しく何かに挑戦したいという気持ちは薄れがちに…。私にとってもいい刺激を受ける旅になると思います」
お母さん「二人で何かを体験するという旅は初めてだよね?楽しみです」
最初の目的地「tamaki niime」に到着!野菜のみを使った体に優しいおばんざいでランチ。
最初に訪れたのは、兵庫県西脇市。のどかな田園風景に囲まれた場所にある、ファッションデザイナー・玉木新雌さんが立ち上げた播州織のアパレルブランド「tamaki niime」のshop&lab。日本だけでなく世界からも注目されているブランドです。今回体験するのは、「niime三昧ツアー」。喫茶&食堂「nomu room&tabe room」でのランチと、工房「lab」を案内してもらえるツアーがセットです(一人1,500円。前日の18時までに要予約。案内は平日のみで、土・日曜は自由見学)。
まずは、「nomu room&tabe room」へ。
絵里佳さん「うわあ!ステキ!うちの店とは真逆のナチュラルな世界ですね!」
お母さん「観葉植物のグリーンがいい感じ♪(と言って、スマホで写真を撮り始める)」
食事はビュッフェスタイル。サラダやお惣菜は、全て肉類や乳製品を使わない、ヴィーガンスタイル。使用する野菜は、地場の無農薬栽培のお野菜と、周りの畑で自家栽培(無農薬・有機栽培)したものが中心です。「どれも美味しそう〜。全種類取りたくなります」と、お二人。
テーブル席について「いただきます」。
絵里佳さん「お味噌汁がすごく美味しい!」
お母さん「うんうん!野菜の味も濃いね〜どれも美味しい!」
スレンダーな二人にしては、盛り過ぎの印象でしたが、二人ともペロリと平らげていました。
店内に飾られているショールに触れて、「えー!?柔らかい〜!」と感嘆する二人。ショールは、「tamaki niime」の代表的な作品。ふわりと優しい肌触りで、握りしめると消えてなくなってしまいそうなほど柔らかな生地が特長です。一体どんな風に作られているのでしょうか?いよいよ、「lab」を見学します。
工房でこだわりのものづくりに触れる
スタッフの藤本さんに案内され、工房「lab」へ。播州織は、無地の布に絵柄をプリントしたり、生地や製品の形で染色する「後染め」に対し、糸を染めてから織ることで模様を作る「先染め」の織物。クオリティにこだわる「tamaki niime」では、服や小物をデザインして縫製するだけでなく、播州織の布地そのもののデザインと生産も手がけているため、染色→機織り→縫製と、全ての工程を見学することができます。
染めた糸は、赤一つ取っても、濃淡の違いで無数の種類が。わざとムラを作って染めることもあるそう。微妙に色合いが異なる糸のどれとどれを使うのか…デザイナーの玉木さんが思い描く布地を具現化するために、無限大の組み合わせの中から選択します。とても難しい作業であると同時に、最も楽しい作業でもあるそうです。
機織り機は、今ではあまり使われていない1960〜1980年代のヴィンテージのものを使用。伝統の技術で、ゆっくりと、ゆるく織っていくことで、空気をまとったような柔らかな生地を生み出します。説明を真剣に聞き入っている二人。言葉少なめの絵里佳さんに対し、積極的に質問をする好奇心旺盛なお母さん。反応は違うものの、思い思いに刺激を受けているようです。
染色は自社で行うものの、糸自体は仕入れていた「tamaki niime」。「糸にもこだわりたい」という思いから、数年前から近くの畑で綿の栽培を開始。labの横にも見学用に植えられています。
お母さん「こんなにこだわっている生地なら、下着や赤ちゃんの肌着も作ってほしい!」
絵里佳さん「うん、絶対いいな!」
縫製エリアでは、デニム生地でパンツの縫製が行われていました。通常デニムの裏地は白っぽく織り上がるのですが、「tamaki niime」は、裏も美しいのが特長。そして、デニムであっても柔らか。触ってみて「柔らかいね〜」と驚く二人。既成概念に囚われない「tamaki niime」らしい作品です。
labとガラスを隔てたスペースにshopを併設。誕生したばかりの作品も随時追加されます。色とりどりの商品が集まり、とてもカラフルな店内。全てが一点モノです。
お母さん「このスカート素敵!」
絵里佳さん「ほんと、似合うね!」
お母さん「買おっかなー」
絵里佳さん「もう!すぐ買いたくなるんだから〜」
こだわりの服作りに触れ、それぞれ収穫があった様子の二人。
お母さん「伝統の産業を大切にしながらも、レベルアップしていくエネルギーに圧倒されました。娘のお店作りに生かしてほしいですね」
絵里佳さん「素材にこだわってイチから作る大切さを学びました。うちのお店でも何かを作るイベントをしたり、こだわりの作家さんのものを置いたりしてみたいです」
そろそろ次の工程へ出発です。(後編へ続く)
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(後編へつづく)