母と娘というのは不思議な関係だ。親子であるのはもちろん、友達のようでもあるし、恋人のようでもある。少なくとも、私はそう思っている。

web上で私の文章を読んでいる人の中には、私が母のことを憎んでいて仲が悪いと思っている人もいるだろう。以前、自分が幼かったころの育てられ方について、母を“刺す”ような作品を書いたことがあるからだ。

「こんなことを書いてお母さんとの関係は大丈夫なの?」とも聞かれたし、私と母が絶縁状態にあるものだと思ったまま、波風立てずに沈黙を守っている人もいるようだ。

でも、実のところ、私と母はとても仲が良い。仲良しでいたいからこそ、母に許諾をとって公の場で“刺させて”もらった。母は痛かったに違いないし、そんな母を見た私も良心が痛んだし、自分で記事を書いたことで起きたこととしても、母を責める他人に対しては殺意が湧いたが、それでもあの作品を書かざるを得なかった。

仲良くしたいから、腹の中の“毒”を外に出した。だからこそ、今は仲良しでいられる。その感覚はちょっぴりおかしくて、他の母娘にはない感覚かもしれないと思う。でも、わからなくてもいいなと思う。

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これはみんなの心に仕舞っておいてほしいことなのだけど、恥ずかしながら私はまだ“母離れ”できていない。しばしば心が不安定になっては昼夜を問わず、母親に電話をかけてしまう。決壊した感情をそのまま垂れ流しても、母はダムのように受け止めてくれると知っている。甘えている。

ついこの間もとってもかなしいことがあって、母に連日、話を聞いてもらっていたのだった。

画像1: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた 佐々木ののか編

「お母さんにLINEでありがとうと伝えてみる企画」の話が来たのはその最中で、私が「ありがとう」と言えば、母は「話を聞いてくれてありがとう」の意として受け取るだろう。そうは思っていたが、まずはスタンダードに「お母さん、いつもありがとね」と送ってみた。

すると、こんな返事が送られてきた。

画像2: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた 佐々木ののか編

ドキリとした。

母に限らずだが、スタンプ1個で返事がくると、ドキリとしてから不安な気持ちになる。私だったら大事な人にスタンプ1個で返信はしないから、まるで自分の“片思い”が突きつけられたようだ。濡れた靴と靴下を履いたまま歩き続けているような、惨めったらしい気持ちになる。

しかし、その数分後、二言目が送られてきた。

画像3: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた 佐々木ののか編

ホッとした。そしてやはり、母は「話を聞いてくれてありがとう」の意で受け取ってくれたようだった。

それを踏まえて、こんな返事を送った。

画像4: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた 佐々木ののか編

今だけじゃないのだ。小さい頃からずうっと母に話を聞いてもらってきた。部活の誰それがムカつくとか、学校にいる奴らはみんなバカで話にならないだとか、会社に行きたくないだとか、1日数時間に渡って話を聞いてもらい、母が苦しくなったときは私が“母”になって、話を懇々と聞いた。

共依存と呼ばれるものなのかもしれないし、子離れも母離れもできていないと言われるかもしれないし、それは世間から揶揄されるものなのかもしれなかった。

画像5: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた 佐々木ののか編

だけど、私と母はずうっと、そうしてきた。そしてこれからもそうしていくのかもしれない。そして私にとって、この関係はほんのときたま居心地が悪くて、だけどだいたい居心地が良い。

その感覚はちょっぴりおかしくて、他の母娘にはない感覚かもしれないと思う。でも、わからなくてもいいなと思う。

お母さん、いつもありがとう。

執筆/佐々木ののか
編集/プレスラボ

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