ピンクやイエロー、パープルなど、花屋に並ぶ色とりどりの花たち。
目的やイメージによって作られる花束には一つとして同じものはありません。

例えば、母のイメージの花束を作ってもらったら一体どんな花束ができるんだろう。
それを見て、自分はどんな思い出や、母の一面を思い出すんだろう。

花屋さんに母の写真を渡して、そのイメージに合う花束を作ってもらう企画「愛を込めて花束を」
忘れかけていた思い出に再び彩りを添えて、母への思いを馳せていきます。

女手一つで娘二人を育て上げてくれたお母さん

画像1: 女手一つで娘二人を育て上げてくれたお母さん

今回、お母さんに花束をプレゼントするのは、ウェディングプランナーの営業として働いている夢乃さん。3店舗のお花屋さんを周り、お母さんについて思いを巡らせていただきます。

夢乃さん「母は明るくて可愛らしくて、でもお茶目な一面もある女性ですね。今は私と旦那、お母さんの3人で暮らしているのですが、母とは友達のように仲良しです。父は小さい頃に母と離婚しています。母は私と妹を女手一つで育ててくれました。今は笑顔で楽しそうにしているけれど、離婚前や離婚直後など母は大変だったと思います」

画像2: 女手一つで娘二人を育て上げてくれたお母さん

お母さんの苦労を間近で見てきたという夢乃さん。

夢乃さん「でも苦楽を共にしたお陰で、母と私と妹3人の結束は強まりましたね。仕事を頑張っているお母さんをなんとか助けようと、休みの日の朝は妹と私がコーヒーを淹れてパンを焼いて、その朝ごはんをお母さんのベッドまで持っていって。そんな感じで助け合っていました」

画像3: 女手一つで娘二人を育て上げてくれたお母さん

夢乃さん「母は資格もたくさん持っていて、仕事もバリバリこなして、子育てもして。祖父母の助けもありましたが、女手一つで娘二人を私立の大学まで通わせたっていうのはすごいことだと思います。私には真似できないですね。だからこそとっても感謝しています。今は私も妹も結婚して仕事もして自立したので、今後はお母さんへしっかりと恩返ししていきたいと思っています」

苦労して育ててくれたお母さんへ恩返しをしたい。そんな思いを胸に、お花屋さんで花束を作りに行ってもらいました。

ときには厳しく、でも全力で応援してくれる母の偉大さ

画像1: ときには厳しく、でも全力で応援してくれる母の偉大さ

最初に訪れたのは、代々木公園駅から奥渋谷方面へ歩いて5分ほどの場所にある2003年オープンのフラワーショップ「葉花(はばな)」さん。「おしゃれなお店!カエルの置物も可愛い」と夢乃さんが話すように、「葉花」は“ウィンドウショッピングできる花屋”がコンセプト。生花だけでなくドライフラワーや雑貨類も扱っています。

画像2: ときには厳しく、でも全力で応援してくれる母の偉大さ

今回花束作りを担当してくれるのは「もらって嬉しいだけでなく、贈る人も嬉しくなるような花束作り」を心がけているというスタッフの飯田さん。早速夢乃さんのお母さんの写真を渡し、花束を作ってもらいました。

画像3: ときには厳しく、でも全力で応援してくれる母の偉大さ

夢乃さん「これが私の母親なんですが、どんなイメージですか?」

飯田さん「とっても清楚な印象の方ですね。お仕事は教師?それとも医療系ですか?」

夢乃さん「んー違いますね(笑)」

飯田さん「あら、違いましたか!(笑) でもイメージを膨らませて、ドライフラワーを使った花束を作ってみたいと思います。このドライフラワーはうちのオリジナルで作っているんですよ」

画像4: ときには厳しく、でも全力で応援してくれる母の偉大さ
画像5: ときには厳しく、でも全力で応援してくれる母の偉大さ

飯田さん「完成しました!」

画像6: ときには厳しく、でも全力で応援してくれる母の偉大さ

夢乃さん「わー素敵! 色が多すぎなくて、シンプルなものが好きな母に合っている気がします。この大きな白い花、力強さがあって母らしいです。ピンクのバラも、キュートな母の一面を表してくれてます!」

飯田さん「大きな白い花は南国で花の王様とされるキング・プロテアという花です。“母強し”というのを表現してみました。あとは清楚で知的な印象だったので、スターチスという小さな白い花も添えています」

夢乃さん「お母さんって普段怒ったり、私のやりたいことに反対したりしないんですよね。大学辞めるときも、仕事辞めるときも怒らずに、いつも応援してくれたんです。唯一怒るときは、嘘をついたとき。キング・プロテアの花を見て、ときには厳しく、でも私のことを全力で応援してくれる母の偉大さを思い出しました」

初めての一人暮らしでも母が電話をしてくれたから乗り越えられた

画像1: 初めての一人暮らしでも母が電話をしてくれたから乗り越えられた

続いて訪れたのは千駄ヶ谷駅、北参道駅から徒歩5分ほどの場所にある「VEIN」さん。

NYブランドのセレクトショップとのシェアショップで、NYのはずれにあるお家の庭先のような雰囲気が漂います。「お母さん好きな野草がたくさん! こんなお店が近所に欲しいなぁ」と夢乃さんも言うように、「VEIN」では野草系も豊富に取り扱っています。

早速花束作りを担当していただく山口さんに、お母さんの写真を見ていただきました。

画像2: 初めての一人暮らしでも母が電話をしてくれたから乗り越えられた

山口さん「清楚で気品があって優しいオーラが漂う方なので、うすいピンクや白、うすい紫など柔らかい色のお花が合いそうですね。ちなみにお母様は何色がお好きですか?」

夢乃さん「おっしゃっていただいたように、スモーキーで優しい色が好きですね。母はお茶目な一面もあるので、その辺も汲んでいただけるとありがたいです」

山口さん「わかりました。そしたらこの辺の白いセルリアとか良さそうですね」

画像3: 初めての一人暮らしでも母が電話をしてくれたから乗り越えられた
画像4: 初めての一人暮らしでも母が電話をしてくれたから乗り越えられた
画像5: 初めての一人暮らしでも母が電話をしてくれたから乗り越えられた

山口さん「できました」

夢乃さん「ナチュラルで、ぎゅっとまとまっているというより動きがあって、自然体な感じで素敵ですね! お母さんは気取った花よりも、身近な場所に咲いている素朴なお花の方が好きなので喜びそうです」

山口さん「清楚なイメージなので白いセルリアを入れて、季節の花でもあるシュウメイギクで動きを出してみました。あとはリシアンサスとアスターでパープルを添えて、白いワックスフラワーで可愛らしさも取り入れています」

画像6: 初めての一人暮らしでも母が電話をしてくれたから乗り越えられた

夢乃さん「このクリンって丸くなっているお花も、お母さんのお茶目さが表れていて好きです」

山口さん「それはクレマチスというお花ですね。お母様が大人の遊び心がある印象の方だったので取り入れてみました」

夢乃さん「お母さんとは友だちのようになんでも話せるんです。高校卒業して鹿児島から一人で東京に上京したときは、毎晩のように電話をかけてきてくれて。電話では飼い犬のこととかテレビドラマのこととかたわいもない話ばかりしていましたが、そんななんでもない会話があったことで、初めての一人暮らしも乗り越えられたんですよね。このナチュラルな花束を見たら、母の優しさと、母の前では自然体でいられる幸せを実感しました」

母と娘、二人三脚で乗り越えてきたから今がある

画像1: 母と娘、二人三脚で乗り越えてきたから今がある

最後に訪れたのは代々木上原駅から徒歩5分、1948年に上原仲通り商店街に店を構えたという老舗「にしむらフローリスト」さん。季節の切花や枝物、鉢植えを豊富に取り揃え、贈る人の地域、世代、慣習、価値観にあった喜ばれる花を提案しています。

担当してくれたのは、笑顔が眩しい鈴木さん。「お客さんの喜ぶ姿が何より嬉しい」という鈴木さんは、父の代から続くこの花屋を今でも毎日切り盛りしています。お母さんの写真を鈴木さんにも見てもらい、花束を作ってもらいました。

画像2: 母と娘、二人三脚で乗り越えてきたから今がある

鈴木さん「知的ですっきりしていて、それでいて明るく朗らかな印象の方ですね。ちなみにお花をお家で飾るとしたらどこになりますか?」

夢乃さん「リビングにあるテーブルの壁際ですかね」

鈴木さん「そうしたらボリューム感のある花束でも良さそうですね。お母様は好きな色とかありますか?」

夢乃さん「グリーンが好きですね」

鈴木さん「じゃあグリーンも多めに入れて、差し色にパープルも入れましょうね」

鈴木さん「お包みするペーパーはどの色がいいかしら?」

夢乃さん「そうですね、母にあげるなら、この柄入りのベージュとブラウンの組み合わせがいい気がします」

画像3: 母と娘、二人三脚で乗り越えてきたから今がある
画像4: 母と娘、二人三脚で乗り越えてきたから今がある

鈴木さん「はい、完成しましたよ」

画像5: 母と娘、二人三脚で乗り越えてきたから今がある

夢乃さん「エレガントで素敵ですね! パープルのお花をメインにシンプルにまとめられた花束は母のイメージにぴったりです。このフリルっぽい花の感じも、母のキュートさが表れていて良いですね」

鈴木さん「この花はトルコキキョウと言って2週間も持つんですよ。このトルコキキョウなら長くお家で楽しんでもらえると思いまして」

夢乃さん「そのお気遣いありがたいです!」

鈴木さん「あとはピンクのリンドウで可憐さを、そして秋の野花に咲くワレモコウで季節感も取り入れてみました。そしてご要望のグリーンも多めで」

夢乃さん「このエレガントな花束を見ていたら、結婚式のことを思い出しました。ベールダウンのとき、お母さんが泣いて、私も涙ぐんでしまって……。父との離婚騒動で母はヒステリーになっていたときもあったんです。母と娘で苦悩して乗り越えてきた過去が報われ、喜びが溢れたあの瞬間、忘れないように心に留めておきたいですね」

画像6: 母と娘、二人三脚で乗り越えてきたから今がある

鈴木さん「私も子供がいるのでわかるのですが、子供が結婚して新しい家庭を持っても、母親だけはいつまでも一番の味方なんですよ。感謝の気持ちを言われたり、ちょっとしたプレゼントをもらったりするだけで、母親は報われるんです。ぜひこれからも折に触れてお母さんへの感謝の気持ちをプレゼントしてみてくださいね」

夢乃さん「確かに今私が悔いのない人生を生きられているのは、これまでお母さんがおおらかに見守ってくれたお陰です。どんな挑戦も応援してくれて、うるさく口を挟むことがなかったんですよね。今後は感謝の気持ちをしっかり形にして、恩を返していこうと思います」

花束をプレゼントして、お母さんとの大切な思い出を再発見

画像: 花束をプレゼントして、お母さんとの大切な思い出を再発見

今回作ってもらった花束をプレゼントしたところ「色のセレクトが新鮮!ありがとう」とお母さんも喜んでくれたそう。

「王者の風格」という花言葉を持つキング・プロテアをはじめ、セルリアの「ほのかな思慕」、トルコキキョウの「清々しい美しさ」という花言葉など、母のイメージに合う花束を作ってもらったことで見えてきた様々なお母さんの一面。

今回夢乃さんは、いろんな苦労を母と乗り越えてきた末に今があるという大切なことを改めて実感したようです。
一枚の写真からでも、セレクトする人や花によって、いろんな表情を見せてくれる花束。
記念日はもちろん、何気ない日常でも、花束を贈ることでいつもと違う発見があるかもしれません。
花を通じて、お母さんとの思い出をもう一度思い出してみませんか?

取材協力
■1軒目 葉花
住所:渋谷区富ヶ谷1-14-14
電話番号:03-3466-0242
営業時間:10:00〜19:00 
定休日:無休(お盆正月を除く)
http:/www.habana.jp/
■2軒目 VEIN
住所:渋谷区千駄ヶ谷3-27-8
電話番号:03-6325-2593
営業時間:12:00〜19:00 
定休日:不定休
http://www.themotthouse.tokyo/vein/
■3軒目 にしむらフローリスト
住所:渋谷区上原2-42-14
電話番号:03-3467-2933
営業時間:9:00〜19:00 
定休日:木曜(予約可、臨時休業あり)
http://www.nishimura-f.jp/

ライター/中森りほ
写真・編集/高山諒(ヒャクマンボルト)

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