同性の親子である母と娘。それは時として距離感が難しい関係でもあります。過去を振り返ると、特に思春期は衝突したこともありました。しかし現在、私は親元を離れ、一人暮らし13年目に突入。宮崎と東京という物理的な距離が幸いし、わりと穏やかな親子関係を築けています。2年ほど前、スマホを手に入れた母はLINEの操作法を習得。今は日々のちょっとした出来事を頻繁に連絡してきます。

自己紹介が遅れましたが、私、姫野桂と申します。フリーライターで生計を立て、先日は本も2冊出版しました。フリーランスという不安定な働き方を心配しているであろう母に、今回は唐突に「いつもありがとう」とLINEを送ってみることにしました。
 
 普段、なかなか気恥ずかしくて感謝の言葉などはっきりと伝えたことはありません。帰省からの別れ際、空港の手荷物検査場に入る間際にしてくれるハグも、毎回恥ずかしいったらありゃしません(うれしいけれど)。
しかし今回は、一人っ子である意味少し問題児だった私を、ここまで愛情かけて育ててくれた母親に、日頃の感謝をきちんと伝えてみようと、決行することに。

画像1: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた。姫野桂

毎年、年末年始は帰省しているのですが、今年は飛行機のチケットが取れなかったため、上京以来、初めて東京で年越しをします。その申し訳無さも含めてLINEを送信。しばらくすると既読になりましたが、返信が来たのは翌日。お歳暮の準備や祖母の世話などで忙しかった模様です。

って、この返信、「ありがとう」に対する内容と違う……。デコポンかイチゴを送ると言い始めています。続いて2通目が届きました。

画像2: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた。姫野桂

私の本をいろんな人に配布しているようです。それでお礼の品物が届いたのだと。おフランス製のハンドクリーム、ありがたいですね。でも、「ありがとう」に対する返信は!?

画像3: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた。姫野桂

お花も届いたようです。「偽物の本物」という、不思議な表現でその美しさを興奮気味に伝えてきています。

画像4: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた。姫野桂

とりあえず母に話を合わせ、イチゴを贈ってもらえるように返信。もう一度「本当にありがとうね〜〜」と伝え、話を戻そうと試みました。

画像5: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた。姫野桂

配送日時と量を聞いてきたついでに、もう2回「ありがとう」と送信しました。

ところが! 母よ、なぜ「ありがとう」をスルーして話を変えてしまうのだ……。お世話になった小学校時代の先生に手紙を送るよう言ってきています。
うちの母、世話焼きな上、「人への感謝を忘れない」がモットーの人。手紙を送るよう言っていますが、お世話になった先生の住所は知らんのかい! ああ、話が噛み合わない……。

画像6: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた。姫野桂

本の宣伝をしていただいたことは大変ありがたいので、先生に手紙を書くことにしました。あいかわらず「ありがとう」に関してはスルーです。完全に母のペースに飲まれてしまいました。

そう、うちの母、ド天然なんです。地元は不良少年の多い地域なので、彼らがエアガンで遊んでいることがあり、道端にはよくエアガンのオレンジ色の玉が落ちています。母はそれを花の種だと思い込み、庭に植えて毎日水をあげ、「まだ芽が出ないなぁ」と待ちわびていたというエピソードもあるほどです。

これ以上、「ありがとう」をスルーされるのは悲しいので、ここからはちょっとした雑談をして終了することにしました。

画像7: お母さんに「ありがとう」とLINEしてみた。姫野桂

数日後、母から「残念なお知らせです」と、LINEが届きました。なんと、イチゴがイタチに食べられて贈れなくなってしまったとのこと!

最後の最後まで母らしいLINEでこの企画は終了となりました。とは言え、今まで不登校気味になったり、金欠に陥ってお金を借りたり、会社員をやめたりと、親に迷惑や心配をかけたことも多かったので、この機会に感謝の気持ちを伝えられたかなと思っています。本も出せたので、それもちょっぴり親孝行になっているのかもしれません。

それにしてもイタチさん、最高のオチを作ってくれてありがとう! イチゴが届かないのは残念だけれど。

執筆/姫野桂
編集/プレスラボ

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