娘が幼い頃は、一緒に様々な体験をしながら、一つずつ学んでいく我が子の成長を、ずっとそばで見守っていたお母さん。娘が大人になった今、今度は、大人同士で一緒に学びあえる機会を作ってみませんか? 同じ体験を共有し、同じ刺激と感動を得られる、そんな母娘の学び旅に出かけます。
海外のおとぎの世界を体験する旅へ!
今回登場してくれるのは、Vol.1に引き続き、神戸で“おとぎの国”を表現したコンセプトカフェ『Cafe Otogi』を経営している絵里佳さんとお母さん。
絵里佳さん「前回の学び旅で、本物の価値を追求することの大切さを知りました。私が経営しているCafe Otogiでも、本物のおとぎの世界を追求したいと思ったんです」
本物のおとぎの世界に触れるために、絵里佳さんが、今回の行先に決めたのは、メルヘン集「グリム童話」の本場・ドイツ。
絵里佳さん 「Cafe Otogiをオープンする際、内装やインテリアのヒントにしたのは、イギリスで出会ったお店でした。私が好きでイメージしていた“おとぎの国”にぴったりで、こんなお店を開きたいと思ったんです。ただ、イギリスは“不思議の国のアリス”が出版された国ではありますが、“赤ずきんちゃん”や“白雪姫”、“ヘンゼルとグレーテル”など、Cafe Otogiでメニューやスタッフの制服のモチーフにしているものの多くは、実はグリム童話が多い。お店をオープンする際、色々相談に乗って手伝ってくれたママと、グリム童話が生まれたドイツを旅してみたいです」
海外旅行には一緒によく出かけるそうですが、「もっぱらロンドンやパリが多い」という二人。今回の絵里佳さんの提案に「ドイツは行ったことがないから楽しみ!」と乗り気のお母さん。いつもは、行動的なお母さんが率先して、旅の行先を考えるそうですが、「海外のおとぎの世界に触れて学びたい」という絵里佳さんの誘いに嬉しさを隠せないよう。
お母さん「絵里佳が自分から言って行動してくれることは今までほとんどなかったので、頼もしいですね」
絵里佳さんは、早速、旅の計画を練り始めます。
絵里佳さん「私は一度ドイツに行ったことがあるのですが、その時はベルリンだけで、おとぎとは無縁の世界でした。今回は、おとぎの世界を体験するのが目的なので、ドイツの南部を目指します。一番のお目当ては、東京ディズニーランドにあるシンデレラ城のモデルになったと言われるノイシュバンシュタイン城ですね」
旅の期間は7泊8日。ドイツ以外にもチェコのプラハも行先に盛り込みました。
絵里佳さん「プラハは、世界遺産に指定されているプラハ歴史地区があり、訪れた人は、まるでおとぎの国に迷い込んだようだと言うそうです。どんな世界なのかをぜひ体験してみたいです!」
ドイツとプラハの間には、絵里佳さんとお母さんの共通の趣味である、音楽やワインを楽しめるオーストリアのウィーンも訪れることにして、今回の学び旅の行程表は完成!宿泊先や飛行機の手配をして…さあ、いよいよ出発です!
ミュンヘンに到着!早速おとぎの世界を体験
羽田から直行便でミュンヘン空港に到着。いったんホテルへ。この旅のメインとなる目的地、ノイシュバンシュタイン城には明日向かいます。空港を出るとメルセデスベンツのタクシーがずらり、早速ドイツ旅の洗礼。お城があるバイエルン州バイエルン・シュヴァーベン地方までは車で約2時間。二人は、翌日ドイツの名所に立ち寄りながら、お城へと向かうツアーバスで行きます。
さて、この旅の本番、お城巡りに向かいます。ミュンヘンを出発して1時間半。最初にバスが到着したのは「リンダーホーフ宮殿」。これから向かうノイシュバンシュタイン城と同じ、ドイツのバイエルン王・ルードヴィヒ2世が1874年から1878年に造った宮殿です。小さな宮殿ですが、建物内部はロココ様式の豪華な装飾があり、庭園内には金色の女神像の噴水があります。
絵里佳さん「なんだろう?この歴史の重みと優雅な感じ。まさにゴージャスな世界!」
お母さん「自然も豊かで気持ちいいね」
絵里佳さん「ノイシュバンシュタイン城も、こんな感じなのかなあ?」
絵里佳さん、早くも、ノイシュバンシュタイン城への想いを膨らませています。
続いて向かったのは、近くの街・オーバーアマガウ。ここは、「受難劇」(イエス・キリストが十字架にかけられて受けた苦難「受難」を中心に描いた宗教劇)を、10年に一度村人が総出となって催すことで有名な街。二人は早速散策してみます。
お母さん「見て見て!普通の民家なのに、壁にフレスコ画が描いてあるよ」
絵里佳さん「ほんまや!めっちゃ可愛い。“ブレーメンの音楽隊”とか、“赤ずきんちゃん”もある〜!」
お母さん「すごい!こんな風に街におとぎの世界が息づいてるんやね」
訪れるまでは知らなかった街ですが、期せずしておとぎの世界に触れることができ、二人ともすっかりテンションが上がった様子です。
憧れのお城に感激!本場ならではの圧巻の装飾
いよいよバスは、最大の目的地ノイシュバンシュタイン城へ。
絵里佳さん「東京ディズニーランドのシンデレラ城を見た時も、かわいくて興奮したのに、本物を見たらどうなるやろ!(笑)」
ワクワクが止まらない様子の絵里佳さんを微笑ましく見つめるお母さん。…と、バスがマリエン橋に到着!ペッラート渓谷にかかった橋で、ノイシュバンシュタイン城を眺められる絶景ポイントとして知られています。
絵里佳さん「うわぁ〜〜!!めちゃめちゃ美しい〜!絵本や映画で見た世界がほんとにそのまんま。でも、ここ断崖絶壁でコワイ…」
お母さん「確かに怖いわ〜。でもお城はキレイ過ぎます。お城自体も美しいけどその雄大な自然がまずすごい!こんな絶景、生まれて初めて!!」
マリエン橋からノイシュバンシュタイン城までは、徒歩で15分ほど。坂道を登ったり下りたり、階段もあって、ヒールを履いてきたお母さんは、少しお疲れ気味の様子。「ママ、脚、腫れてるよ。大丈夫?」と、絵里佳さんがお母さんを気遣う場面も。
絵里佳さん「いつも元気にしてるから、今まで気にしたことなかったけど、ママも年を取ってきたんやから、絵里佳も気を遣わんとあかんってことやな」
今までは、母娘というよりも親友のように仲良くいろんな所に出かけてきた二人。絵里佳さんの心の中に、娘として母を労わる気持ちも芽生えてきたようです。
ノイシュバンシュタイン城は、1869年に第4代バイエルン王・ルードヴィヒ2世が造らせたお城。歌劇作家リヒャルト・ワーグナーをこよなく愛し、ワーグナーが描いた中世騎士のロマンティックな世界を再現するために、莫大な費用をかけたと言われています。白鳥城とも称される、美しい白亜の外観もさることながら、豪華絢爛な内装でも有名な、世界の名城の一つ。ルードヴィヒ2世は、建設の半ばで他界してしまったため、1階、2階部分は未完のまま残されています。
お母さんは、日本語解説付きイヤホンを付けて入場。一つ一つの部屋の解説に聞き入り感動しているお母さんと、目の前に広がるザ・メルヘンな世界にただただ興奮する絵里佳さん。思い思いの見学方法で、お城の中を楽しんでいます。
絵里佳さん「さっき見たリンダーホーフ宮殿と造った人は同じだけど、規模が全然違うね。ほんまにおとぎの国の中のお城にいるみたい!」
お母さん「やっぱり、本物ってすごいわ。迫力が違う」
豪華な城内の中でも随一のきらびやかさを誇る「玉座の間」。4、5階が吹き抜けになっていて、巨大な黄金のシャンデリアが吊るされています。ため息混じりで眺める二人。
お母さん「すごくゴージャス!やっぱりシャンデリアが似合うよね」
絵里佳さん「やっぱりシャンデリアはメルヘンの世界には欠かせないね。Cafe Otogiもシャンデリアにして正解やったな」
ルードヴィヒ2世がこよなく愛していたオペラ「タンホイザー」の舞台である、アイゼナハの世界遺産・ヴァルトブルク城の広間をモチーフにした壮大なホール「歌人の広間」。音響もよく、コンサートが開かれることもあるそうですが、当時は王一人が楽しむために作られたそう。しかし、王がここで観劇することはなかったといいます。
そして、この「歌人の広間」の奥を見た瞬間、二人は息を飲みます。
お母さん「これ、Cafe Otogiの壁にそっくり!」
絵里佳さん「ほんまや!森の中にいるみたい。うさぎの絵とかも描いてあって素敵!うちのお店の世界は、おとぎの国に合ってたってことやんな?」
Cafe Otogiの壁は、ロンドンのお店の壁紙をモチーフにしたそうですが、同じような絵が、ノイシュバンシュタイン城の壁にも使われていたことで、絵里佳さんは自信を持った様子です。
絵里佳さん「ゴージャスさでは太刀打ちできないけど、空気感や色合いなど、ぞくぞくする物語が詰まっていそう。うちのお店が目指したい世界でもある」
自身の感性を再確認!自信につながった
充実したノイシュバンシュタイン城の見学は終了。おとぎの世界にどっぷりと浸かることができた二人。絵里佳さんは、自信にもつながったようです。
絵里佳さん「“おとぎ”というと、かわいいイメージがありますが、実はダークな側面も持っています。私はそのダークな面も好きで、お店のインテリアも落ち着いた色合いを採用していました。今回ドイツを訪れて、やはりダークな面があってこそ、おとぎの世界のインテリアが映えることが分かって自信になったし、勉強にもなりました」
お母さん「私も、初めて見る世界ばかりで、とても感銘を受けました」
後編では、おとぎの街・プラハを訪れた様子をお伝えします。
(後編へつづく)