親孝行エッセイ「バーベキューに行きたくなかった」菊池良
「11月3日に結婚しよう」
彼女とそう話し合っていた。文化の日だから。2人は文化系だから。ぼくはライターだし、彼女は俳句をやっているし、まじりっけなしの「文」化系だ。
そうと決まったら「ゼクシィ」を買うしかない。コンビニの雑誌コーナーに走ると、どこにあるのかすぐにわかった。すごく分厚かったからだ。辞書ぐらい分厚かった。結婚するための辞書というコンセプトなのかもしれない。
雑誌には付録がついていた。なんと、特製の婚姻届だ。これは使うしかない。結婚の神たる「ゼクシィ」が託してくれたのだ。婚姻届、降臨。
「お互いの親に保証人になってもらわなきゃいけないね」
彼女がそう言う。ぼくの顔が強張った。...