親孝行エッセイ「最後の親孝行」地主恵亮
2005年の8月3日は私の記念すべき20歳の誕生日だった。
年に1度やってくる誕生日、その中でも20歳の誕生日はいつもの誕生日とは少し異なるアニバーサリー感がある。大人の仲間入りをし、いろいろな人から「おめでとう」の嵐に包まれるような特別な1日になる。はずだった。
ただその日、私はほぼ誰にも「おめでとう」とは言われなかった。集まった人の数はなかなかの規模だったのに。今まで会ったこともないような親戚もいたし、会をスムーズに行うスタッフもいたのに。ただ多くの人が私に「おめでとう」とは言わなかった。
理由はこの会が母のお葬式だったから。誕生日会ではないのだ。母は私の20歳の誕生日の前日に亡くな...